米田知子ーー暗なきところで逢えれば

東京都写真美術館、2013年7月20日〜9月23日
現存作家個展、単独開催
鑑賞日:9月21日(土)

私と世界の間に横たわる、私と世界を隔てる、私と世界を繋ぐ、私と世界の距離を視るために、測るために、視えるようにするために、私は自らが存在し立つ場所を探す。その場所と私との間にある距離を、時間をも含んだ距離として抽出する。視ることで距離は縮まらない。視線によって対象を彼方にとどめおき、レンズを通してその距離を定着させる。距離とは何でできているのか。時間を含むというならば、時間以外のものは何か。それとも距離は時間そのものなのか。不可視の地霊が立っている私の身体を取り囲み、風景と私の間の距離を形作っているのだろうか。ならば、歴史のない空間には距離は発生しないのだろうか。
距離の彼方に存在しているのかもしれない他者が私に向ける視線が、私の距離。他者の存在を強く意識するほど、その距離は遠く離れ、密度を増し、呪縛ともいえる絶望的な強度を持つ。そのようにしか世界のなかに立つ自分の位置を測ることはできない。

米田知子 暗なきところで逢えれば

米田知子 暗なきところで逢えれば