吉川民仁展 Timbre

日本橋高島屋美術画廊X、2018年4月4日〜4月23日
現代作家画廊個展
鑑賞日:4月19日(木)

虚ろな世界に距離は発生するのか。どこまで手を差し伸べても、眼差しを向けても、到達する地点は現れない。行きつ戻りつしても、何ものにも触れることはできない。物質の表面に施された微かな手の軌跡に、視線が引っかかることはあるが、それは虚ろへの入り口であり、虚ろを発生させる装置でもある。起点はあるが終点がないために距離が発生しない。どこまでも虚ろが続いていく。その虚ろな世界を満たすものは何か。光は回っている。軽やかに、不安定に。薄く、まばらに。
その光のなかで自らも光の一部として希薄化し、自分の位置を確認することもできない。視覚以外の感覚も機能せず、光の波に溺れることしかできない。漂う先も分からず。距離のない、自己と他者の区別もない世界で、空虚の一部となる。