高田マル 「この花、ダリア、ダリア、ダリア、」

NADiff Window Gallery、2024年3月28日〜4月14日 現代作家アートスペース個展 鑑賞日:4月12日(金) 線を引く。繰り返す。消す。線を引く。繰り返す。消す。この反復行為のリズムが、心臓の鼓動とシンクロする。生み出されていくのではない。古い何かから新…

海老塚季史 " 旅と生活 "

s+arts、2024年4月12日〜4月27日 現代作家画廊個展 鑑賞日:4月12日(金) 何かを手に取る。そのものが何であるのかは理解している。そして、その理解以外の何かも、そのものは有しているに違いない。そこで、その手にしたものをよく見る。よく見るなかで、…

吉山裕次郎「Destruction and Creation」

ギャラリー58、2024年4月8日〜4月13日 現代作家画廊個展 鑑賞日:4月12日(金) 夢のなかでしか存在しない場所がある。現実のある建物や通りと似ているが、どこか異なっている。もしくはよく知っている場所に、知らない建物があるのだが、その場所の一部だと…

アブソリュート・チェアーズ

埼玉県立近代美術館、2024年2月17日〜5月12日 現代美術テーマ展、自主企画単独開催 鑑賞日:4月12日(金) 道具には定められた機能がある。かといって機能だけを求めなくてもいい。そればかりか機能とは異なった意味を付与されることがある。その意味が増殖…

佐野陽一「眩暈の岸」

GALLERY TAGA 2、2024年3月28日〜4月22日 現代作家画廊個展 鑑賞日:4月5日(金) 私の目の前には空間が広がっている。そこには光があり、空気があり、木々や水や人間が作った構造物など、さまざまなものが充溢している。あるとは感じにくい大気も、時には風…

秋野ちひろ展「Bake」

Gallery SU、2024年3月23日〜4月7日 現代作家画廊個展 鑑賞日:4月3日(水) こころのなかに触覚を伸ばす。自分のなかを不定形ななにかの形を掴もうとする。感触があった部分から全体像を探していくが、感覚も動いていき、全体像はあやふやになってしまう。…

中平卓馬 火―氾濫

東京国立近代美術館、2024年2月6日〜4月7日 現代物故写真家回顧展、国立美術館、朝日新聞社共催単独開催。 鑑賞日:3月26日(火) 彷徨う時になにを見ているのか。彷徨うことが自らの生の証としている時に。見たものすべてが自分自身となるというのだろうか…

生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真

東京ステーションギャラリー、2024年2月23日〜4月14日 近代物故写真家回顧展、公立私立美術館3館巡回 鑑賞日:3月26日(火) 写すということを写るということを考える。被写体として印画紙に定着された像は、写したいと願った像と、どこか違う。写したいも…

川田順造『サバンナの博物誌』

読書録 川田順造、『サバンナの博物誌』、ちくま文庫、2001年12月20日第2刷 挿画:小川待子 こうした、新しい要素のとり入れ方で気がつくのは、新しい要素が古い要素との、直観的にあきらかな機能上の類似に基づいて採用されていることである。だから新しい…

VOICE 坂本太郎展

コバヤシ画廊、2024年3月25日〜3月30日 現代作家画廊個展 鑑賞日:3月26日(火) 地表が膨れ上がる。その体積をどのように把握するか。表面積を計測しても、その量塊を把握することはできないが、その内側を見ることもできない。そうであるならば、表面を厚…

高山登

YOKOTA TOKYO、2024年2月5日〜2月22日 現代物故作家画廊個展 鑑賞日:2月19日(月) 見えているはずなのに、意識しないで目を向けないものが、世の中には多すぎる。すべてを等質に見ることは、不可能だとしても、それらは日常にありふれており、人々の生活の…

飯嶋桃代展 Sphinx―人間の台座

ギャルリー東京ユマニテ、2024年2月5日〜2月24日 現代作家画廊個展 鑑賞日:2月19日(月) 手に入れるためには、まず失わなければならない。充実を求めるために、虚ろを設る。かたちとはそれ自体で成立しているのではない。物体としても意味としても、なにか…

豊嶋康子 発生法──天地左右の裏表

東京都現代美術館、2023年12月9日〜2024年3月10日 現代作家公立美術館回顧展、自主企画単独開催 鑑賞日:1月18日(木) 観察をする。対象を設定して、その対象が何ものであるかを。自分との関係性から距離を測ることはしない。自分と対象との間に起きる出来…

マティス展

東京都美術館、2023年4月27日〜8月20日 近代物故西欧作家回顧展、メディア共催大規模巡回展 鑑賞日:6月10日(土) 彼は何を見て、何を描いているのだろう。ものの形なのか。ものの色なのか。人物と室内の調和、あるいは不調和なのか。描くことそれ自体と言…

生誕110年 傑作誕生・佐藤忠良

神奈川県立近代美術館 葉山、2023年4月22日〜7月2日 物故戦後作家回顧展、公立美術館巡回共同企画 鑑賞日:6月8日(木) 人の形象を成しているから、それを具象という。figurative とされるものだ。とはいえ、人の形象が別の何かを表すための記号であるとし…

若林奮 森のはずれ

武蔵野美術大学 美術館・図書館、2023年6月1日〜8月13日 物故現代作家回顧展、自主企画単独開催 鑑賞日:6月1日(木) 私がいま立っているこの場。ここをなんと名付けたらいいのか。私と場の関係から、私の存在を問うことを求めてはいない。私は存在せず、他…

顕神の夢ー幻視の表現者 村山槐多・関根正二から現代まで

川崎市岡本太郎美術館、2023年4月29日〜6月25日 近現代美術テーマ展、公立美術館共同企画巡回 鑑賞日:6月1日(木) 幻を知覚していると、自覚する。現実ではないもの、状態、現象を、現実に存在するものとして。幻は、私の内部に発生するのではなく、外部に…

丸山太郎個展『魔性のセーブポイント』

TAKU SOMETANI GALLERY、2023年5月18日〜6月7日 現代作家画廊個展 鑑賞日:5月31日(水) いま目の前にある物体にどのような名称を与えようか。その物体が元来保持している機能は、一部取り払われ、別の領域に属していたものが挿入されている。機能はかろう…

中村宏 戦争記憶絵図

ギャラリー58、2023年5月16日〜6月3日 現代作家画廊個展 鑑賞日:5月31日(水) 体験が身体のどの部分に残るのかは、その体験による。傷のように肉体に物理的な痕が残ることで心理的に体験が持続されることだけを、ここで対象にしているのではない。修練のよ…

川島清 DOUBLE 銅版手彩色

ギャルリー東京ユマニテ、2023年5月29日〜6月17日 現代作家画廊個展 鑑賞日:5月31日(水) 金属の針を持ち、銅の板を傷つける。銅の板の内部は均等ではなく、その粒子は層になって折り重なっている。その薄い、ほとんど厚みのない層の、重なりを目指して、…

白井晴幸 「COPY | RAYS | VIEW」

HECTARE、2023年5月3日〜5月28日 現代作家画廊個展 鑑賞日:5月23日(火) 強い陽射しのなか、木々の葉が風に揺れる。風になびき、ゆらゆらと不規則な反復運動を繰り返す葉の向こうに青空が見える。青空と私の眼の間に存在するもの。それが何かは知っている…

ダムタイプ|2022: remap

第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 アーティゾン美術館、2023年2月25日〜5月14日 現代作家海外展帰国展展 鑑賞日:5月12日(金) 情報はいつでも手に入る状況にありながら、まったく入ってこない。なぜだろう。デバイスはこの手にあ…

「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容 瀧口修造・阿部展也・大辻清司・牛腸茂雄

千葉市美術館、2023年4月8日〜5月21日 近現代写真企画展、公立美術館巡回 鑑賞日:5月12日(金) 日常を日常として生きる。その日々は常ならず、日々別のものとして現れる。しかしその日々の差異を取り立てて言挙げることなく、日々というものは変化するもの…

横尾龍彦 瞑想の彼方

神奈川県立近代美術館 葉山、2023年2月4日〜4月9日 物故現代作家公立美術館3会場巡回個展 鑑賞日:3月26日(日) 私は私ではない。私という個体は存在しているのだが、それは関係性のなかの一つの状態に過ぎない。そしてその個体も確固としたものではなく、…

野村和弘 むしろ、幸せの音

gallery 21yo-j、2023年3月9日〜4月2日 現代作家画廊個展 鑑賞日:3月19日(日)、25日(土) 世界から私が受け取った感覚と情報。それは私の身体に入ってきた時に、世界とはいったん切り離される。私自身が世界の一部であることに異論はもちろんない。皮膚…

長谷川 彩織「 迷子の風景 −水槽の花園− 」

KATSUYA SUSUKI GALLERY、2023年3月4日〜3月21日 現代作家画廊個展 鑑賞日:3月19日(日) すべての細部が同じ価値を持った世界に入り込んだ時、視覚は喪失する。その機能は保持されているとしても、網膜から先の統合するエリアにおいて情報の混乱が発生する…

坂口恭平日記

熊本市現代美術館、2023年2月11日〜4月16日 現代建築家美術館個展、自主企画単独開催 鑑賞日:3月15日(水) 何かを作るということ、ある場所に暮らすということ。この2つは人として生きるということに結びついている。おそらく根源的なことでもあるだろう…

アーバン山水

Kudan house、2023年3月10日〜3月19日 現代作家画廊外グループ展 鑑賞日:3月12日(日) 建築はその様式と様式の需要において、土地と時間と深く結びついて、生活の、そして風景の一部となる。それは人の生活の一部として、人の生活をゆっくりと変化させてい…

戸谷森「pass by」

GALLERY TAGA 2、2023年2月24日〜3月20日 現代作家画廊個展 鑑賞日:2月24日(金) 描くということは、それを目的としていないにも関わらず、何かを表象することになってしまう。ここに問いが3つ生まれる。表象されたものは何であるか。それはどのように表象…

黒坂祐「眺めと見分け」

KATSUYA SUSUKI GALLERY、2023年2月4日〜2月26日 現代作家画廊個展 鑑賞日:2月19日(日) 世界認識は、感覚器官に依るところが大きいのはもちろんのこととして、そのうえで世界認識の方法について思考を拡げるときに、感覚器官の特性についても触れる必要が…