James Turrell: A Retrospective

Los Angeles County Museum of Art、2013年5月26日〜2014年4月6日
現存作家個展
鑑賞日:8月26日(月)

視えるということが、網膜に写った像の形を認識することではなく、その像を脳内でどのように再構成したかを認識するということだから、目の前にある像と、それを視ている人の認識した像には、ずれがあり、またその認識した像の姿も人それぞれとなる。その限りにおいてはその像の形は大きな意味を持たない。なぜならそれは視た人の脳のなかにしか存在しないのだから。形があるように視えるのも、すべて光が反射が網膜に写り、それがその人の経験によって形に認識されるにすぎないのだから、形があらかじめ不要である。そこには光があればいい。その光の移り変わる色彩もまた、視る人によってその都度作られる色彩にすぎない。その光が感情を喚起するというのはどういうことか。その喚起された感情は個別の体験でしかないことは自明であるが、その喚起に恭治性はあるのか。発生のメカニズムにおいて共有される感情。あるとないを超えたところで、視るというシステムだけに作用する光の塊には、焦点をあてて視るべきものはない。人はなにを視るのか。網膜に写った信号はなにかに変換されず直接脳に届くとでもいうのか。全身を覆う淡い色彩は原初でもなく、永遠でもない。快不快の及ぼさない、実は感情をも喚起させることはない、光に向い、時間のみを認識することとなる。

James Turrell: A Retrospective

James Turrell: A Retrospective