桑原啓善『宮沢賢治の霊の世界』

読書録

 

桑原啓善、『宮沢賢治の霊の世界』、土曜美術社出版販売、1994年10月25日第三刷発行

 

宮沢賢治の生涯と作品を、他界を見て書き留めた人として読み解いていく。父親による浄土真宗の教えと、賢治自らが出会った法華経ばかりでなく、各宗教の共通する終末と救済の思想と賢治の作品を重ね合わせる。

 

他界が「誰にでも見える筈なのに(実際は見えていない)賢治には見ている世界」とはどういうことか。〈幽霊の複合体〉の幽霊とは、賢治にとり、ミューズ、ないしはミューズ達である。賢治はミューズとの交信を通じて、他界を心象として受信する、それを彼はただスケッチする。(31頁)