戸谷成雄―現れる彫刻

武蔵野美術大学美術館、2017年10月16日〜11月11日
現代作家回顧展、自主企画単独開催
鑑賞日:11月11日(土)

世界に、目の前の空間に、よく知っているはずの場所に、何か異質なものが存在する。その異質なものは、他者の手によってどこかしら加工されているがために、他者の意思がかたちとなって、存在する。それに目を止めた時、世界のありようが変わる。その空間は以前と同じものではなく、その存在を主張するものの周辺のみ、微妙に歪む。もちろんそれは見ることと密接に結びついているのではあるが、存在、その有/無、そのことを見る視線と結びつけた表/裏の関係がそのものの周囲に発生する。空間は変質しなければならない。なぜなら人の手の加わっていない空間は、制度のなかには無いのだから。自然のなかで太古の遺物を見つけるように、今、人の手から生まれたものを見ることはできない。だから、あらかじめ変質した空間の中で手の跡、かつて人が存在した痕跡、を見ることで、見るものは無人の原初に還る。

戸谷成雄 彫刻と言葉 1974-2013

戸谷成雄 彫刻と言葉 1974-2013