開館70周年記念 空間の中のフォルム―アルベルト・ジャコメッティから桑山忠明まで

2021424日〜95

神奈川県立近代美術館葉山

美術館所蔵品企画展、自主企画単独開催

鑑賞日:71日(木)


彫刻は風景を象り、行為を象り、それら揺れ動くものを固形化する。その固形化されたものの周囲で、もう一度風が舞い立つことはあれど、かすかに揺れるのみだ。象るということを検証するために、いくつもの方法が試みられ、いくつもの対象が選ばれる。象られるものも、私であり、あなたであり、その間の空間である。象る方法も充満と空虚と、方法は尽きない。

 そのなかで、それらはすべてまやかしだという人物が現れる。彼は、まやかしの術もまたまやかしに過ぎないと、丁寧に説明をする。虚実という対比はない。虚と、虚の先があるだけだ。そのためにはまず実を消さなければならない。生の実感を、人間の存在を表すことができるのは彫刻だけと信じている人々に、すべては一瞬の光の煌めきでしかないと、酷薄にも告げる。告げるために彫刻という在ることを前提にした、そしてその存在は曖昧でしかない媒体を選択する。虚の先を見てしまった創造者は、自分の生をどう見ていたのか。鏡面を覗き込んでも、そこに丁寧に、覗けとばかりに設られた穴を覗いても、創造者に出会うことはない。