国立新美術館、2020年6月24日〜8月24日
国内現存作家+古美術企画展、共催:國華社、朝日新聞社、文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会
鑑賞日:7月8日(水)
遠くから風が吹いてくる。目を凝らしても何も見えない。何者かがそこにいる。こちらの声は届かない。呼ばれているのか。呼んでいるのか。求めていたわけではないが、きっと出会ってしまったのだろう。相手の声は聞こえない。歩き始める。止まる。それが何かを知る必要はあるのだろうか。私ではない。似てもいない。しかし、異質ともいえない。その質とは何か。目には見えず、声も聞こえないが、感知してしまうもの。白く靄がかかった世界で。時間と距離が無効な、だから空間とも称することができない場で、私はあなたと向き合っている。のかもしれない。もしくは背を向けあっている。のかもしれない。きっと見る必要はないのだろう。私のなかに質となって存在しているあなたが、本当にあなたなのかは、あまり重要ではない。歩く。止まる。風を受け、その風は私の後方へと消えていく。