舟越桂 私の中にある泉

渋谷区立松濤美術館20201 25日〜2021131

国内現代作家公立美術館回顧展、自主企画単独開催

鑑賞日:121日(木)


見ることによって言葉が現れる。消えてしまいそうな言葉たちを、瞬時に捕まえて、ピンで留める。言葉の標本は増えていき、それぞれの時間は消える。順番はなくなり、言葉を回収する準備ができたら、その回収の手順によって選択される。その手順は言語化されていない。あとで更なる言葉を寄せることはあっても、そのルールを規定することはできない。ピンで留められた標本は?ただ順番を待っている。選択されないことも受け入れつつ。それでも時には探索の目に触れることはある。黙って揺れているのみ。もしくは身じろぎもせず。見たことは像として記憶され、言葉はその増幅器として作用する。増幅器は見ていないものに作用し、見ていないものに形を与える。そこで生まれた形は言葉を持っているのだろうか。形が言葉を欲したとしても、壁の言葉に帰ることはできない。