マーク・マンダース —マーク・マンダースの不在

東京都現代美術館2021320日〜622

現代海外作家公立美術館個展

鑑賞日:618日(金)


なにかの姿を再現するということが、過去から行われてきたが、それらはすべて再現をしたという事実以上の意味は発生させることはできない。時折り、人のかたちを再現して神の似姿だと言い張ることで、意味を持たせようとはしていたが、その詐術もこの頃は流行らない。人のかたちに意味はない。人のように見えるだけだ。人にも特徴があり、ある人物をモデルにしたところで、それが人類を代表することはない。そのなかにあってもギリシャ彫刻だけは、規範として振る舞うことが許されてきたのだが、それを詐術の一部に組み入れることで、再現というテクニックから、再現されたと思われるものは、あらかじめ存在しないし、存在しようがないという赤裸々な事実を現前させよう。

 それもまた、物体の持つ存在の限界と、経済効率と結びついてはいるのだが、だからといって永遠に手が届くということではない。不安にかられ、常に細々とした詐術をまぶしながら、嘘であることを暗に説明しながら、それすらも世界の断片だと主張することで、詐術としての世界は完結する。