クリスチャン・ボルタンスキー −lifetime

国立新美術館2019612日~92

現代海外作家美術館個展、国内館巡回、共催:朝日新聞社

鑑賞日:822日(木)


死はやってくる。本人の意思とは関係なしに。その方法の選択さえ許されず。しかし、意思を持ったものが他人の死を決定づけることは可能である。そのように理不尽に決定づけられた大量の死を前にして、すでに存在しない個人を想う。その個人は実体はなく、出会った記憶もない。その死のみを情報として恐怖とともに持っている。情報としての他者の死に実体を与えるために、手掛かりとして情報と記憶の間にあるものを選択する。記憶は現在生きているそれぞれのなかにある。情報によって個人の記憶を作動させ、他者の死を生きている個人のなかで実体化させようとする。言葉にならない言葉が浮遊し、誰とも結びつかない存在の痕跡が彷徨う。すでに亡くなっている人々のかつての実体と結びつかない情報と記憶。今ある自分の存在を確かめるために、無数の使者を召還し続ける。