ジュリアン・オピー

東京オペラシティ アートギャラリー、2019710日~923

現代海外作家美術館個展、単独開催

鑑賞日:827日(火)


人の存在を抽象化してみる。人はそこにいて立ち、振る舞い、通り過ぎる。鳩も同じ。その歩き去った人は皆本当に存在したのだろうか? 視覚的に、匂いが残っている、空気が動いて風が起こった、その存在を感覚的に捉えることが常である。その移ろう仮初めの存在を、仮初めの実体として表す。その時に人はどのような姿をしているのか?と言うよりも、もはや存在も実体も必要ない世界がそこにある。奥行きのない世界を、別の素材で形に起こすことで、そこに人の形があるように見せて、しかし何もない。物質の厚みのことではない。実際に存在していると思っている私たちの実体がそこにはない。情報があり、その情報が仮象として通用するならまだましな話で、情報もない気配以下の何かとして人は行き交う。ゴーストの発生。それは存在する本人の問題ではなく、感知する大多数の他者という名の本人たちの出来事として。