利部志穂「水平考 ぼくは、空飛ぶ、夢をみる。ホシが、泪が、流れない。」

多摩美術大学彫刻棟ギャラリー、202167日〜630

現代作家大学内ギャラリー個展

鑑賞日:614日(月)


空間は空ではない。私から私の意識が発信され、壁に反射して、空間のなかを動き続ける。空間は抽象的な存在ではない。常に具体的に距離があり、素材があり、無くてもいいような異物が点在し、そして異物の一つとして私がいる。その空間に異物を増やすことに、何か意味があるのだろうか。私の意識を充満させることに、意味はあるのだろうか。そんなことをしなくても、空間は実体のあるものとして現に存在している。異物を増やすことで、空間は変貌しない。空間が計測されることもない。

 変貌も計測も目的ではないとしたら、その空間に差し込まれた異物たちは、何を主張するのか。自らの存在を叫ぶには、場違いであり、機能もしていない。かといって控え目に佇むことで、気づきを誘うような媚びも売らない。野に花が咲くようにあるというのか。床の間のいけばなのように、作為の産物でしかないというのか。庭石のように、換喩による世界の再生産だというのか。空間は沈黙している。