若林砂絵子展

みゆき画廊、2013年9月23日〜9月28日
現代物故作家個展
鑑賞日:9月24日(火)

強い日差しと色彩のなかで影を見つめる。すべてが光のきらめきのなかで揺らぎ、移ろい、空気の粒子と交じり合い消えていく。降りそそぐ粒子と立ち昇る粒子の集合として。実体の所在が明らかでないから、影を探す。影だけが実体の存在を保証するかのように。それとも影こそが実体か。影によってそのかたちが明らかにされるもの。光のなかで半透明に揺らぐ形態を、光自身が捕捉したかたち。その偽りこそが、目に見えるもの。その偽りのかたちによってしか、世界の把握は始まらない。その黒々とした影は、鳥か人か。空を翔ぶのか地を這うのか。偽りの痕跡を追い続け、丹念にトレースした、その影も刻々と変化する。その変化は骨の成長か、地霊のざわめきか。陽射しを避けた薄暗い部屋のなかで、石の冷たさを感じながら、見ることのない影を描く。