古道具、その行き先―坂田和實の40年―

渋谷区立松濤美術館、2012年10月3日〜11月25日
現存個人眼展、単独開催
鑑賞日:11月23日(木)

道具もまた旅をする。道具の道具としての使命を、機能を、役割を、使用者との交流の末、まっとうし、あるいは、目的半ばで、旅に出る。道具としての職能を持っている限りは、旅先で、どのような出会いがあろと、道具として生きる。そしてまた、新たな職能を加えられることで、道具としての過ごし方にも変化が起きるのだろう。
その新たな職能に鑑賞物という項目が付け加えられた時、それは道具なのだろうか。道具の延長に別の世界があるというのか。その世界は道具自身で切り拓くものではない。なにものかの手により、別のフィールドへと移しかえられることになる。それもまた再生の一つの姿であり、もう一度、道具であることを取り戻し、道具へと還っていく道なのかもしれない。