升谷真木子個展 “Whose sleeve?”

S.O.C. Satoko Oe Contemporary、2016年10月1日〜11月5日
現代作家画廊個展
鑑賞日:11月2日(水)

あるものがかたちを変え、表と裏が入れ替わり、回転し、複数の状態であり、しかしそれは一つであることをやめず、空間に散りばめられていく。同じものの現れが多様だとしても、それが一つであることが重要となるため、それは版の方法をとる。一つの版から複数の現れを持つことが目的なのではなく、一つへと還っていくために。版は度々逸脱する。版のかたちを取らずに、別のものを引き寄せ、配置することを許してしまう。画面の外へ向かった版は、その姿を消す。版を見せずに存在する事物たちは、一つであることの証を持たずに寄り添い合う。それらが同じものでしかないことは、その存在のあり方を証左とすることもできようが、それ以上に自らが版となって画面へと還っていくことを希求する。画面は画面自体の変転、反復によってそのなかに描かれ押し付けられ塗り込められた形象が、何ものかの影でしかないことを示す。