中谷ミチコ:引き出しの中のドローイング

アートフロントギャラリー、2021年8月6日〜9月5日

現代作家画廊個展

鑑賞日:9月3日(金)


人が集まるのは、ともに働くため。息と汗が入り混じり、我と彼の境はなくなっていく。湿気が互いを結びつけるように、私たちは一つのものとなる。個体としては分離しているにもかかわらず、総体としては一つになる。しかし、一つではない。個体の意思がそれぞれにあり、それぞれの力を発揮している。そのことは否定できないが、互いを結ぶ湿気をどう捉えるのかを、この際見極めよう。

 いや、一人でいいと誰かがいう。私は私だとも。その私は一人には耐えられない。だから私は分裂し増殖する。それぞれが私を静かに主張しながら、私のするべきことをする。その隣に私がいることを感じながら。そこに安心感を得ながら。さあ運ぼう。何を。さあ持ち上げよう。何を。すべては私のなかの会話であり、私は私を掘り上げ、引っ張り出す。そこで我に還った私はまだ眠っている私に手を差し出す。