小川遥展―手鏡―

かわかみ画廊、‪2017年11月11日〜11月25日‬
現代作家画廊個展
鑑賞日:11月22日(水)

文字が連なるように草木が私の周囲を囲み、その花や葉が目の前に幾重にも揺らめいている。その一つ一つを凝視する。そこに事物の優劣はなく、すべては等価になり、奥行きは失われていく。しかし、私は草木の空間を彷徨っている。私が存在する空間の奥行きは、私の目のなかで、そして、私の世界のなかで、異質なものに変わる。空間は確かにある。そこでは自分の存在が消え、空間が薄く伸ばされ、微かな揺らぎを伴った一枚の布のように、ある時は曲がって奥行きを持ち、そしてある時は真っ平らに張られ。
そこで私が見た草花は、固着される。存在しない空間に。それぞれの奥行きを主張することなく。私の目のなかと同じように、そして私が読む書物のなかと同じように、それぞれが言葉となり、かたちと意味の関係すら、存在の奥行きであるかのように失いつつ。