日本・オブジェ 1920-70年代 断章

うらわ美術館 2012年11月17日〜2013年1月20日
テーマ企画展、単独開催
鑑賞日:12月5日(水)

文脈を離れた物体が、新たな属性を創出する。新たな価値として、それは、元来の文脈の幅を広げることとなる。そのはみ出し方、逸脱、変わり身は、より豊かな創造の可能性なのか、規範の崩壊なのか。命名によるすり替えというゲームから始まったこの行為は、それぞれの物体の新たな文脈の豊饒さに酔いしれるというよりも、そのゲームの展開にこそ価値が見出されていく。あるものがそれまであった規範からはずれ、名もなき物体へと化してしまうことのリアリティというものが、切実なほどに人々の生活に迫る=芸術表現として機能する時代が、幾度かあったはずだ。それと並行し、避けることができなかったゲームの細分化。
過去、文脈、規範との断絶という手法から産みだされた、名づけようのない物体に、命名する。その命名はどのような過去、文脈、規範に属しているのかを問われることは少ない。別の文脈への移行により新たな外観を獲得した物体は、新たな外観を獲得したと視えることによって、その出自から常に離れることができない。結局、元来の姿しか視ることはできないのだろう。その物体が引き裂かれてゆき、決して分離することがない、あるディレンマのもとで身悶えする姿にこそ、時代のリアリティがあるのか。