シャルダン展―静寂の巨匠

三菱一号館美術館、2012年9月8日〜2013年1月6日
共催:NHKプロモーション、読売新聞社
特別協力:ルーヴル美術館、後援:フランス大使館
海外近世作家回顧展、メディア共催、単館開催
鑑賞日:1月6日(日)

無数の部屋が続く巨大な宮殿の一室で、窓からはいってくる光線と、ランプの炎を頼りに描きだされる世界は、やはり光でしかない。年月を封じ込めた石組に囲まれた部屋もまた、一人の老人が絵を描くには、広すぎただろう。絵筆が絵の具に触れる。それがキャンバスに載せ替えられる、わずかな音が部屋に響き、そして石でできた壁面に吸収されていく。窓からさす光のみが時間の進行を伝え、翌日また光がさすことで、時間は進まず、同じ時が永遠に繰り返されるだけということを、伝える。画家は目の前のモデル、モチーフのそそがれた光の粒を描く。陰影があることが存在の証かのように。視たままに、画布にそのまま写し取ったかのように、細密に描くほど、画面は光の粒に満ちていく。その時、人物は、食材は、器は、光のヴェールに包まれ、そっと画布の奥の闇のなかへと吸い込まれてゆく。