秋野ちひろ展「Bake」

Gallery SU、2024年3月23日〜4月7日

現代作家画廊個展

鑑賞日:4月3日(水)

 

こころのなかに触覚を伸ばす。自分のなかを不定形ななにかの形を掴もうとする。感触があった部分から全体像を探していくが、感覚も動いていき、全体像はあやふやになってしまう。触れることができた部分をつないでいき、その形を確認しようとする。さて、どのように現実の物体に置き換えていこうか。もともと形などない。質量もない。それに仮の姿を与えようとする。やはりそれは形であって、形ではないものにしなければならない。触れた軌跡のみを物体にして、しかしそれは虚ろともなる。その虚ろではあるのだが、それは空っぽというわけではない。もともとは私のこころで、そこには気持ちが詰まっている。形について考えてきたが、本を正せばこころが問題だった。そのこころを直接に形にするにはどうしたらいいか。触覚はそのままに、内側から満ちてくるものを導いていく。それが仮の姿だとしても、それらは私のこころだということができよう。そして触覚との接点、その感覚が視覚化され、こころの全体が定形を拒むために動いているということに、それは非常に微細でゆっくりとしたものなのだが、安らぎを覚える。