衣川明子 糞して寝ようか

URANO、2017年5月20日〜6月17日
現代作家画廊個展
鑑賞日:6月8日(木)

私の身体を何者かが通り抜ける。それは私自身でもあるはずなのだが、私はここに居続ける。その何者かは、私のどうにもならない感情、記憶、願望として、私を苛み、私を勇気づける。私は私自身であることを確認できなくなり、制御不能な感情こそが自分自身としか把握できない。通り抜けているのが私自身であり、その私を通す虚ろな形態は何か。人の形をしているが、それは人ではない。しかし、感情と記憶と願望が充満した何かであり、私と相似形をなしている。その奥行きを持たない相似形は、時間も空間も物語も孕むことはない。今、ここにいる私の私自身の肉体はどこにあるのかはわからないが、確実にいるはずの私の代理物として虚ろな何かはある。初めから私は虚ろでしかなく、そこに充満するはずの感情と記憶と願望は、いつしか消えてなくなる。その虚ろをまた何者かが通過していき、何かが充填され、と同時に消えていく。