豊嶋康子 発生法──天地左右の裏表

東京都現代美術館、2023年12月9日〜2024年3月10日

現代作家公立美術館回顧展、自主企画単独開催

鑑賞日:1月18日(木)

 

観察をする。対象を設定して、その対象が何ものであるかを。自分との関係性から距離を測ることはしない。自分と対象との間に起きる出来事には興味はない。その出来事は結果として生まれるものではあるが、結果であって、目的ではないのだから。戦略と戦術を間違えてはならない。そこで観察のためには、繰り返しが必要となる。繰り返しの回数、その量で結果は変わらない。1+1は2にならず、1のままでなければならない。加えるのではなく、乗算となるように、そして量で意味が変わらないように。量は純粋に量でしかなく、新たな意味を持ってはならない。その乗算は、意味において同質のものから構成される。そして決してヴァリアントを作らない。物事は変わらないということを証明するために、同じではないものを作り続け、観察する。観察は制作と同義となり、制作をすることによって、観察は消えていく。観察が消えた時、私と対象との距離もなくなり、私は消える。私が対象のなかに含まれることはなく、制作と一体化することもなく、ただただ私は消滅し、同じ意味を持つ夥しい数の何ものものかが、残されていく。