マティス展

東京都美術館2023427日〜820

近代物故西欧作家回顧展、メディア共催大規模巡回展

鑑賞日:610日(土)

 

彼は何を見て、何を描いているのだろう。ものの形なのか。ものの色なのか。人物と室内の調和、あるいは不調和なのか。描くことそれ自体と言い切るには、画面のうえで行われているすべての出来事に膨らみがありすぎる。最晩年に至っても、対象を手放すことはなかった。線は時として色彩となって現れる。その逆もまたしかりで、色面は画面を分割する線として機能する。それはある段階からで、それまでの彼の関心は別のところにあったといえる。どこに転換期があったのかと問うことも困難だ。常に転換しているのだから。そのなかでも面と線の交錯は、大きなトピックとして立ち現れる。人物のなかよりも室内のなかにそれは認められやすい。隣り合う、重なり合う色彩が発生させる空間がその主題のようでもあるが、空間は室内を再現的にしたものではなく、空間の前後を失わらせる働きを持つ。前後を失った空間のなかに人物は座る。座る場所はなく、その体重は支えられることもない。空中に異様な格好で静止しておる。空間の重力を発生させる地点として。