没後100年 中村彝展―アトリエから世界へ

没後100年 中村彝展―アトリエから世界へ

茨城県近代美術館、2024年11月13日~2025年1月13日

近代物故洋画家回顧展、自主企画単独開催

鑑賞日:12月5日(木)

 

社会の変化と共に更新された精神には、それまでには存在しなかった器が必要となる。更新された精神、その躍動して止まることのない魂の動きに合わせて、器も自在に形を変えなくてはならない。まず新しい道具を手にする。そして次にその道具によって再び形作られる精神にあった器=様式を模索していく。様式は先例があるのでそれを借りるのがいい。私の精神は私に摂りこまれる光景と情報と感情とで、絶えず振動し振幅し、姿も内容も変わっていく。だからその精神の似姿としての様式もその都度変えざるを得ない。私は自分が生きる様式を定めようとしているのではない。私の様式を求めているのだ。道具との対話と様式との対話から、私の精神の姿も輪郭を持ち始める。そしてその輪郭を喰い破る出来事があり、また様式を模索し始める。そのなかで借り物ではない、私自身の描き方に到達する。精神と道具と様式とが合致し始める。解放、ではない。呪縛、でもない。奔放、でもない。様式が誰かのものではなく、自分の手のなかに生まれたことを自覚する。その時にはもう、精神の時間が残されていないことを自覚しているとしても。