横尾龍彦 瞑想の彼方

神奈川県立近代美術館 葉山、202324日〜49

物故現代作家公立美術館3会場巡回個展

鑑賞日:326日(日)

 

私は私ではない。私という個体は存在しているのだが、それは関係性のなかの一つの状態に過ぎない。そしてその個体も確固としたものではなく、無数の粒子の電気的な集合体に過ぎない。その無数の粒子は、周囲のさまざまな現象によって、揺れ動く。だとすると、私には意思というものがなく、自分以外の現象に動かされていることになる。なので、私自身も個体という概念はなく、どちらかというと風の、そして水の一形態とみなした方が、話が早い。

 その水が、土と水と油を手にし、自分の振動を増幅させて、周囲の風の動きに合わせて解き放つ。その土と水と油は、その場所に属することとなる。その土地の大気の揺らぎによって作られたものだから。その脇に佇む私はどこにも属してはいない。風の一部でありつつ、風にはなれない。自分を粒子に解体することもできない。周囲の微細な動きに共振しつつ、別の周波数で自らを駆動する。しかしそれは私の意思ではない。