GENKYO 横尾忠則:原郷から幻境へ、そして現況は?

東京都現代美術館2021717日〜1117

現代作家美術館回顧展、公立美術館三会場巡回

鑑賞日:930日(木)


今の私は過去と異なっている。元々、静止してはいない。常に揺らぎ変化をしている。変化を受け入れてきたはずだし、変化を求めたこともあった。その結果の一瞬の点が、今ということになる。変化は認識することができないのかもしれない。揺れ動くなかでは私の認識も揺れ動くからだ。幸に一瞬の点がある。森のなかのパン屑のように、消えてしまう可能性もあったものたちだが、幸いに残っている。点を増やさなければならない。私はまだ森を歩き続けているのだから。変化を記録するということではなく、私が私として歩いている、ただそれだけの証として、点はある。私の歩みの速度や軌跡を、傍から見ている他人がとやかく言うこともあるかもしれないが、それは私の耳には入らない。今、歩いている私には関係のないことだからだ。だから歩いている私は、以前の私と変化していないのかもしれない。行為も変わっていない。歩こうという意思も変わらない。では、なにが変化しているのか。その時々の点は、それぞれで変化しているとも、変化していないとも叫んでいて、森はやかましい。だから私は先を急ごう。