GALLERY MoMo Ryogoku、2021年9月18日〜10月16日
現代作家画廊個展展
鑑賞日:9月30日(木)
その奇妙な板を通り抜けると、世界はペラペラで破れやすいものへと変貌する。その変貌した世界では、人の姿もモノのかたちも、柔らかく、そして荒いものとなり、さらには繰り返され増殖する。元の世界の痕跡はほぼなく、世界を構成していた像の大まかな存在の薄皮のみが、量産され、新たな世界を構築する。こちらが実体だと言わんばかりに。もともと世界も実体も幻想に過ぎないと言わんばかりに。そしてどこにも流通しようのない、新たな像が壁を埋め尽くす。それは元の世界を封印するためだ。薄皮が充満した世界では、薄皮が真となる。それは捏造ではない。次の実体の誕生となる。過去に戻ることはない。未来はやってくるのだろうが、充満した後では、その入口も塞がれている。私が立つ場所ももはやないというのに。奇妙な板からは、何者かによってかつての世界の像を変質させたものが送り込まれてくる。そして気づく。すべては奇妙な板を介して循環していると。この循環のなかに私の現在はない。奇妙な板は、過去によって生産される未来の残り滓を撒き散らすだけだ。