志村信裕「歓迎光臨」

ユカ・ツルノ・ギャラリー、2016年3月19日〜4月16日
現代作家画廊個展
鑑賞日:4月15日(金)

物の姿を限りなく消す。物質を物質として使用しつつ、抽象化する。像は影として揺れ動き、影の実体は闇に消える。鳴り響く鈴の音も、低く短く、曖昧な闇と光の粒の中にかき消される。私が今立つ場所は、光と闇の淡いの中にあり、視線は強すぎる光を避け、像を結ばない影をさまよう。
曖昧さの中で自らの身体の存在を確認するには、眼を瞑るしかない。空気の波である音を実体として捉え、光という粒子と波動を限りなく遮断し、身体性を取り戻す。
かつての実体の影の断片の分裂と繰り返し。目に入る同時性と差異。全体を創造するため力と、こぼれ落ちていく光を追い続ける力。視覚に要求されることを、他の感覚で補い、空間に没入する。その行き先は定かではない。自分自身の内部でもなく、他者の世界でもない。
ただのその世界の入り口は開かれている。