平松麻「待つ景色」

Gallery SU20221112日〜1127

現代作家画廊個展

鑑賞日:1118日(金)

 

朝起きて、顔を洗い、一日が始まる。着替えて、家を出る。天気も気温も毎日違う。すれ違う人も、耳に入る言葉も毎日違う。しかし、私は毎日動き、食べ、眠ることを繰り返している。同じことを繰り返す私に、同じではない出来事がゆっくり静かに溜まっていく。ほとんどのことは忘れてしまう。すれ違った人達の顔をすべて覚えていることはできない。忘れたものが溜まっていく。そして、想い出すことはなく、ゆっくりと混ざり合う。ときどきその溜まったものを確認しようとするが、そのための手段がわからない。その溜まりは私のなかにあるのだが、私の一部ではないからだ。私と私を取り巻く出来事との間にある距離。私と私のなかに溜まった何かとの距離。どれほど私と離れているのか。それとも密着しているのか。手を伸ばしたら触れられるのかもしれない。両方とも。そう考えて手を伸ばしても掴めるものはない。両手を彷徨わせて、時には自らを裏返し、なにものかを探し続ける。