二木直巳展ー初期の見晴らし台ー

ギャラリエ アンドウ、2017年9月12日〜9月23日
現代作家画廊個展
鑑賞日:9月21日(木)

目の前にあるが、手が届かない距離にある。実体は感じている。形態も把握している。感覚としては希薄ではあるが、存在している。そのものとの距離を前提として、その存在を如何に実感するか。それを如何にして画面に定着させるか。存在は物体であるから、画面上に描かれる、顔料を使って平面的に、色彩として描写されるものも物体でなくてはならない。しかし、物体に置き換えるのではなく、矩形のなかの出来事として再現する。手の届くものではなく、遠くにある視覚的な何かではなく、確かに目の前に存在するものとして。それは自分自身の姿が、対象と転倒した状態でもある。無数に伸びる線は、その把握のために距離を求める定規の複数の姿で、その線の集合として色彩があるのではなく、距離という色面のなかを彷徨う視線の喩えとして存在する。距離は線ではなく厚みとして描かれ、画面の奥行きは対象の前後にあるものとして知覚される。