渡辺豪 個展 所在について

ANOMALY202235日〜42

現代作家画廊個展

鑑賞日:324日(木)


すでに失われたものたちが、もう一度消える。場所を変えただけと考えることもできようが、そもそも場が消滅し、所だけが存在している。つまり位置を把握する術がないので、場所が変わるという考え方が成立しない。そのことに気づいたのは、場という概念よりも所のほうに優位があり、そこでこそ存在が明滅するからだ。ここから失われたという形容は機能しないことが判明する。存在も定かではない。在るという状態を成立させるための要素が抹消されていくなかで、かつて在った所という、所のみが浮き上がってくる。どこに。どこから。その所も存在とともに明滅しているのか。いや、そうではない。所は在るを支えるために与えられた仮の台座として機能する。台座であるからには、別の制度に支配されているわけだが、その制度もまた在るが設定する。所は自身では明滅せずに、在るとともに存在し、在るとともに消える。そこで所と在るは常に時差をともない、それが一致した時に双方とも完全に消滅する。