東影智裕 五島記念文化賞 美術新人賞 研修帰国記念「見えない時間」

平櫛田中邸アトリエ 2021923日〜1010

現代作家個展

鑑賞日:107日(木)


生命の欠片を拾う。それはすでに動かず、生を終えたもの。欠片にもう一度生が宿ることはない。抜け殻ではなく、かつて生命を持っていたなにかの一部ではあるのだが。その欠片を手に取り、よく観察をしてみると、そこには別の生命が宿る兆しがあるように思える。元の姿とは異質なものとして。何ものかに寄生されるのではなく、欠片が新たな生を求めて変容していくといえば、いいのだろうか。しかしそこで手にするのは生ではない。生と死というサイクルからはみ出るしかない、生と死が同時に成立してしまう存在のあり方。

 さてその欠片をどうしよう。いつまでも手にしていると自分自身も欠片と同化してしまいそうだ。どこかに置かなければならない。日の当たる場所か。それがどのように存在するのかを、よく観察できるように。欠片が欠片を求める姿を見定めなくてはならない。けっして動かず静止しつつ、その皮膚、表面は、外界と接触している。だからこそ表面を注意を向けなければならない。