杉本博司 ロスト・ヒューマン

東京都写真美術館、2016年9月3日〜11月13日
国内現代作家個展、自主企画単独開催
鑑賞日:9月22日(木・祝)

光はそこかしこにある。眼に映る、そしてレンズを通す光は、多くの場合、事物の反射でしかなく、事物はその表面を反射しているのか、それとも事物の内側に宿る見えない光を照射しているのかは、さだかではないが、それを見る眼は、いずれにせよ光を感知する。世界に片隅に打ち捨てられた様々なものが光を当てられず佇んでいる。その内側の光はどこにも届かない。稀に外部から光が当たり、一瞬のきらめきをその本質であるかのように捉えられることがあるが、それは内側の光と手を結ぶことはない。だからこそ、事物が忘れ去られ崩壊していくなかで、鎮魂としての光を、それが虚構であることを前提に、仮に照射する。その仮の、構造体としての壁にもならない皮膜に投影された虚構の光は、周囲の闇を闇として照らし出す。照らされた闇は、その光が虚構であるがために、虚構の闇として、光の不在を証明する。

歴史の歴史 杉本博司

歴史の歴史 杉本博司