牧野真耶展ー夜のとばりー

かわかみ画廊、2021918日〜102

現代作家画廊個展展

鑑賞日:919日(日)


夜は光が溜まるのが遅い。それは時間を体験として把握すること。ゆっくりとゆっくりと、光を感じつつ、物の表面が変わっていくのを待つ。そして表面に光が染み込んでいく。物のなかに光と時間が溜まっていく。ゆっくりと。待つしかない。ほかに何ができようか。私を超えた世界と、今、交感している。その溜まった時間を消したいと思うのは、横暴だろうか。もう過ぎ去ってしまい、消しようのない時間ではあるのだが、その痕跡が具体的に私の目の前にある。消そうとしても消しきれない。むしろ消すことによって、より露わになることが、消すことの意図だといえよう。染み込む速度と消す速度が、ずれていく。常にどちらかが過剰になり、バランスを崩すことで、光は輝きを取り戻す。夜のなかで。夜は闇ではない。闇だとしても、時間はある。ただじっと動かずに耳をすます。光が溜まっていく音を聴く。時間が溜まっていく匂いを嗅ぐ。すべては私のなかに入ってくる。