庄司朝美「2021年の9月」

gallery 21yo-j202199日〜926

現代作家画廊個展

鑑賞日:99日(木)


奥行きを縮めなければならない。距離を消さなければならない。幻の原理を暴くために。現実の距離と像の関係を実証するために。奥行きは作られる側から消されていく。その消し跡によってできる奥行きは、距離を持たない。なぜならそれは表面を持たないからだ。距離のない世界に私は佇む。漆黒の闇のなかに。空間を把握するには、視覚以外の感覚を研ぎ澄ますしかない。触覚には自分の身体のサイズという規制がある。聴覚は触覚よりも距離を持つ。しかし、身体が移動すると計測し直す必要がある。目を閉じて、触覚によって発生する音を聞き続ける。触れていることよりも、多くの情報が耳から入り、触れているものは、いつしか消えていく。私は幻に手を伸ばそうとしているに違いない。聴こえているものと、触れているものは、もはや乖離してしまった。触れるために手を伸ばす必要はなく、音が直に指先に伝わってくる。その音を消せと誰かがいう。どうやって。