小林孝亘展

西村画廊、2018年3月10日〜4月21日
現代作家画廊個展
鑑賞日:4月19日(木)

柔らかな光が降り注ぎ、世界を満たしていく。その光を受け止める器とは何か。満ちていくその枠組みを、光を光としてその場所に留めておくための。その何かは光を吸い込み、緩やかに放出し、空間へと光を返していく。光を受けることで存在を誇示することもなく、他のものと同じように画面のなかに配置されているのだが、器としての役割は確固としてある。空間に光を満たすことは可能であり、光のみを描く方法を編み出すことも可能であったはずだ。光を光として描くのではなく、光の作用、光が空間に満ちるとともに循環していく運動を、運動として描かず、あえて静止した状態で示す。器は触媒としてある。触媒であるから器という比喩が可能であり、それは比喩に過ぎなく、別のものを象徴する機能は持っていない。だから、そこにあることが重要であり、そこにあるということ以上のものが、画面に描かれることはない。

ふつうの暮らし、あたりまえの絵 小林孝亘の制作ノート

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