木下恵介「Places and Colors」

GALLERY TAGA 22021715 日〜8

現代作家画廊個展

鑑賞日:724日(土)


草を踏む。草も生命だということはわかっていて、傷つき、再起不能になる可能性もあるのだが、踏み続ける。踏まれて強くなるなんて言葉を発することはできない。草に対して私はまごうことなき加害者でしかない。加害者として草を見る。見る草は踏まない。踏む草は見ない草だ。踏まれた草は折り重なる。層をなす。草汁を移す。別の葉に、大地に。

踏まれることで草は草自身を転写する。その後のことは知らない。それは一回しか起こらないことだから。見ている草も、私に踏まれないだけで、誰かに折られ、毟られ、刈られるのかもしれない。見ている草に対して、たまたま今私は加害していないように見えるだけだ。その未遂の加害も引き受けよう。そのような義理はないのだが。踏んだ草に対する謝罪の意味もないのだが。その場に私が立ったという事実を、別の形に残すことによって、草と私の関係を世界に提示しよう。すでに証人としての風景はある。すべての行為をその内に孕みつつ、すでに過ぎ去ったものとして。