小川万莉子「misty form」

GALLERY 麟、20201118日〜125

現代作家画廊個展

鑑賞日:1118日(水)


空間を作る。視線が入っていけるように。それは、かつて見た光景。その光を再現する。そこに色彩はあるのか。風は流れている。その風の流れを、画面に留めるのか、送りだすのか。送りだす先は画面の奥。しかしそれは行き止まりになっている。距離は発生する。記憶との間に。であれば、空間も記憶と結びついている。視線の先には何もない。なぜならそこには色彩がないから。かすかな色彩の気配はある。それは風として。風はあたるものもなく、抜けていく。虚を。画面の奥で跳ね返り、記憶のなかを再び通り抜けるものとして。この往復運動を繰り返すなかで、距離は次第に狭まってゆく。厚みのない世界へと。元より記憶には距離がないのだから。記憶のなかへ。距離のない世界へ。