遠藤利克 寓話Ⅴ−鉛の柩

秋山画廊、2016年12月5日〜2017年1月26日
現代作家画廊個展
鑑賞日:12月8日(木)

身体を水平に横たえ大地と一体化し、時を待つ。自分の身体の表皮の形態を保つ力が緩いでいき、内部は空洞として意識されるようになる。皮膚の表面を流れる空気は冷たい。身体のなかをゆっくり流れる液体も冷たい。皮膚の内側に満ちている物質はあるのだが、それは物質として名付けられるものではなく、意識の届かぬものと化してしまっている。やはりそれは空洞と呼ぶべきだろう。そして私の表皮の外側に硬いしかし気泡を多く含んだ皮膜が設えられる。私と硬い皮膜の間にも空洞はある。二重の空洞は、その中心へと向かう力と、中心から外へと向かう力を発生させるが、その力は硬い皮膜のなかに閉じ、静かに循環する。外に出ることはなく、ゆっくりとゆっくりと対流する。そして地に向かって沈んでいく。その力を鎮めるかのように鼻の奥に心地いい香りが、空洞を充満する。鼻と毛穴から身体の内側の空洞へと香りは届き、さらに地に沈む。