越前谷嘉高展

なびす画廊、2015年2月2日〜2月21日
現代作家画廊個展
鑑賞日:2月14日(土)

目の前にある世界を何かしら手触りのある実体として把握し、その実体の感覚を描くには、目の前の世界の姿を自ら失い変型することが必須となる。世界というものがもともと実体ではなく、関係から成り立っているために、その関係を解きほぐし、バラバラとなった事物一つ一つを取り出そうとするのは、理にかなっているように見える。しかし、それでは世界を把握することはできない。述べたとおり世界は関係でできているからだ。事物ではなく関係を実体化しない限りは、世界へと結びつかない。そして、事物と事物の間に発生する関係は、関係として描かずに、事物として描かれなければならない。その事物は隠喩ではなく、隠喩もまた関係の一つの仮象であるから、そこもの固有のかたちを持つ。関係に裏打ちされ屹立する固有性が、新たな事物の姿として差し出される。それは往々にして異形をとり、視覚的整合性よりも触覚的な身体性を求める。その身体がもまた、バラバラになった事物の一つに過ぎないとしても。