菅木志雄 置かれた潜在性

2015年1月24日ー3月22日
国内現代現存作家個展、自主企画単独開催
鑑賞日:2月10日(火)

私とあなたの間に横たわる距離を知覚するために、世界の厚みを測る。その厚みの基準となるものは、もののかたちとその表面のあり方にある。どこまでがもので、どこからが空間なのか。ものと空間が触れるその厚みをスライスし、触知するために、物言わぬものを身じろぎさせる。もののかたちがかたちとして保つ状態を永続させず、かといって変化もさせず、まさに移り変わろうという瞬間の振動として封じ込める。その封じこめも固定化ではなく、振動の持続として存在させる。振動の持続は崩壊の始まりを予兆として持ちつつ、ものの存在の一瞬としてあり続ける。ものの表面のから反射する光が私に届く時、その距離が現れるはずであるのだが、私は私の表面と空間の境を知覚することはできない。そこで私は自ら動き出し、ものに触れ、ものの位置を変える。動いたものと、それによって変化した関係と、手を差し伸べる私。ものとものの間を動き、存在の配置に介在する。手が加わったものの在り様は、私自身であり、その空間に点在するものとものの距離が、私と世界との距離であり、観ているあなたとの距離でもある。