Air Pocket 戸谷森

秋山画廊、2014年4月21日〜5月3日
現代作家個展
鑑賞日:4月22日(火)

道を歩いていて、不図、耳に入るさまざまな音。目にうつるさまざまな物。知ら知らずのうちにそれらとの距離を測り、物理的な距離も、心理的な距離も、自分の速度に合わせ関係性を築き、消していく。自分の振動と取り巻く音や物の振動とが干渉する。どこまでが自分の振動でどこからが相手の振動か。歩く道の振動や家々の振動や都市の振動は。無機的な対象にも、振動を感受することは可能だ。世界は常に不安定で揺れ動き、響き合い、自分の存在も定かではない。山のような大地と一体化した質量を持った存在のなかでは、自分はもはやその振動のなかに飲み込まれ、その震えのなかに自分を震わせて自己を規定する方法を手繰り寄せるしかない。自己を滅するのではなく、一体化させるのでもなく、振動のなかに身を委ね、共鳴す部分と反発する部分とを読み取り、自己の輪郭を描いていく。その輪郭もまた、歩みを進めるにしたがって形を変える。確かな共鳴と確かな異和を認めつつ、震源そのものに触れるまで。