中村一美展

国立新美術館、2014年3月19日〜5月19日
現代作家個展、自主企画単独開催
鑑賞日:3月24日(月)

空間の在り処を知るために空間を発生させる構造を手に入れようとする。矩形を斜めに区切れば、その画面に何が生まれるのか。直線と重ね合わせればどのように変化するのか。線が途切れた時、その間隙に生まれる空間はあるのか。現れては消える、そしてけして手にすることができない空間を求め、身振りは激しくなり、また、遅行し。描かれた画面に層は見えるが、空間は出てこない。光を吸収するために必要な空間は、光を反射させて手前に捏造される。大きなストロークが奥行きを押し殺し画面の振動を潰す。空間は歪められ捻じ曲げられ身悶えるなかで、微かに息をする。空間というものがそもそも視線のルールによって仮構されたものに過ぎないのだから、絵画の空間を発生させるということは、この仮構を拒否するところから始めなければならないというのか。空間が歪むのではなく、歪められた空間は、構造を持つことはできず、幻視からしか生まれえない。空間は常に幻影をして発生するが、そこには微かなさざ波が立つばかりで、空間として入っていくことはできない。空間を手前に出そうという操作もまた、拒否したはずの仮構を結果として召還してしまう。空間とは何か。けして現れない空間。それを導くための呪術としての身振りの集積が、画面の前の身体性が微かな空間の痕跡として画面に定着する。

透過する光―中村一美著作選集

透過する光―中村一美著作選集