柳瀬正夢 1900-1945ーー時代の光と影を描く

神奈川県立近代美術館葉山館、2014年2月11日〜3月23日
物故近代作家個展、公立館3館共同企画
鑑賞日:3月22日(土)

目の前のさまざまなものにあたり反射した光が目に入る。その反射と認識の仕組みを次々と解き明かしていくかのようなルールに心惹かれたとき、ルールが本質なのか、対象を本質を掴んだというのか。そうでなければ掴みようがない対象、そうでなければ描きようがない対象に眼差しは向けられる。対象を描くルールと社会構造のルールとの間に乖離が発覚する。乖離を描くために描くルールが変更される。社会構造の本質と物事の本質が融合し、描くことは変質していく。降り注ぐ光は何に向かって反射したのか。光を描く行為は、社会という対象と社会に向ける眼差しの位置によって、光を失ってしまう。そこで描かれる世界は、誰かの視線を代弁することを前提にしつつ、自らが発する視線のトートロジーでしかない。描くことで、世界の仕組みを描くことで描くこと自体を更新していくことを望んでいたはずなのに、世界を更新するために、描くことは後退する。その視線すら失われた時、かつてのルールのみがその手に残される。

ねじ釘の如く―画家・柳瀬正夢の軌跡

ねじ釘の如く―画家・柳瀬正夢の軌跡