菅野由美子展

ギャルリー東京ユマニテ、2015年1月19日〜1月31日
現代作家画廊個展
鑑賞日:1月28日(水)

見えるように対象を丁寧に描写することで、描写された画像はますます実体から離れていく。しかし目の前にある対象の外観とは対象の実体のようではあるが、対象の本質ではないことは、すでに自明とされている。美とは対象の外観ではないのだから。だからといって、美は絵筆を持つ人の内にあると設定したがために、描写は不要とされてしまっている。過去に倣い、美はあくまでも対象の側にあるとしなければ、美を描くことはできない。では、どのような対象に美が存在するのか?美は対象に備わるのではなく、画家によって対象に埋め込まれるのだろう。画家自身が埋め込んだ美をもう一度絵筆で取り戻す作業。万物に精霊を宿らせる。その精霊を埋め込むのは、他者でもある。だから、描写が精密であることが求められるのではなく、他者が埋め込んだ精霊と自分が取り出す精霊のズレが描かれていないと、そのズレた隙間から美が現れないのである。