サイ・トゥオンブリーの写真ーー変奏のリリシズムーー

DIC川村記念美術館、2016年4月23日〜8月28日
海外物故現代作家テーマ展、自主企画単独開催
鑑賞日:7月20日(水)

絵画とは結局、画面の構造ではなく、描く行為でもなく、視覚的な効果を求めるものでもなく、その像の現れこそが問題でしかないと言い切ろう。対象は重要であるが、対象をいかに表すかの時代が過ぎた後は、対象からどのように対象の像が現れるかを描く。対象はなくとも像は現れる。対象を眼にしたときは、眼に映る対象を描くのではなく、網膜に写らない像の発生を見る。それは幻視ではなく、想像でもなく、確かにそこにあるものに対して観ているものは観ているものではないことを証明するための絵画。それは風景を切り取る行為のなかにも予兆はある。観ているものと切り取る行為、さらにその像の表し方のそれぞれの差異が、私の視線と像に間の距離となって、距離は時間を産む。今ここのかつてが私の視線を像のなかへと入り込ませ、私は作品の時間を生きる。

サイ・トゥオンブリーの写真―変奏のリリシズム―

サイ・トゥオンブリーの写真―変奏のリリシズム―