「具体」―ニッポンの前衛 18年の軌跡

国立新美術館、2012年7月4日〜9月10日
戦後美術動向検証展、単独開催
鑑賞日:8月10日

新たな道を切り拓く。絵具は絵具ではない。キャンバスはキャンバスではない。あれも芸術である。これも芸術である。すべての素材は芸術を発生させるものとして手中にある。そこに含まれないものはない。絵筆を持って人物や風景や模様や色の面を描くことはやめよう。粘土こねて、石を削って人物や動物を形作ることはやめよう。それ以外はすべて許される。振り返って、ほかの作品がみな見えなくなっていたら、それはは新しい道ではなかったのかもしれない。別の目的地へ行くための、新しくはない別の道。なぜなら芸術が別の目的地へと進まざるえなかったから、古い道を新しい道として歩み始める必要があった。その古い道は誰のものだったのか。皆知っていて皆知らない。
その別の道を進んで行った時、フト元の道と交差する地点がある。それは安らぎか。それとも戸惑いか。そのあまりにも神々しいばかりの、得体の知れない作品が、元の道を歩む人々の行く先を照らす。しかしその創造者たちは自らが照らした先には進まない。また、古い道を新しい道として歩き続けるしかないのだろうか。そして目的地は見つからない。目的地を見つけないために進む。目的地らしきものが視野に入ると、その道は放棄されるか。それとも目的地を過ぎて道を歩き続けるか。目的をもたない目的地にたどり着いた時、人々は祝福する。その祝福はなにを讃えるのか。元の道のゴールだからか。そもそも道は分かれていたのか。目指すべき目的地に違いはあったのだろうか。とはいえ、別の道を進まなければ、たどり着くことのできない地点であることは確かだ。後ろからその姿を見るものは、設定された目的地を見失うことはない。そしてようやく気付く。正しい目的地にたどり着くためには、やはり目的地はあらかじめ見失われなければならない。

「具体」ってなんだ?―結成50周年の前衛美術グループ18年の記録

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