吉山裕次郎「Destruction and Creation」

ギャラリー58、2024年4月8日〜4月13日

現代作家画廊個展

鑑賞日:4月12日(金)

 

夢のなかでしか存在しない場所がある。現実のある建物や通りと似ているが、どこか異なっている。もしくはよく知っている場所に、知らない建物があるのだが、その場所の一部だと認識して、夢のなかで行動する。その夢のなかの場所に辿りつく方法もさまざまで、なにかのプロセスを経て辿りつき、この場所は前にも来たことがあると、夢のなかで思う。現実世界では、過去の記憶を繰り返し思い出すとしても、どこかしら改竄をしてしまっている。自分が本当に経験をしたのか、記憶のなかで捏造をしたのか、それとも夢の出来事だったのか、わからなくなる。その無意識が作り出す歪みのなかにある、確からしさ。どんなに変更が加えられていても、現実のある一点と結びついているもの。それゆえに、混乱が生まれるのだろう。記憶と真実の差異は、大きな問題ではない。外形的なものでしかなく、比較によって得られるものはない。それでは、あの夢のなかにしか存在しない場所には辿り着けないから。