ピーター・ドイグ展

東京国立近代美術館2020226日〜1011

現代海外作家回顧展、共催:読売新聞社、ぴあ

鑑賞日:625日(木)


目に見えるものは幻。目に見えないものも幻。その二つに違いはない。描かれるべきものに実体はなく、描かれたあとも存在しない。それでは、問わなければならない。描という行為にある私は存在するのかと。私は描きつつ、絵のなかに入る。幻の側へと。現実とよく似た、似ているというだけでまったく異なる世界。どのように似ているというのか。描かれた世界のなかの私は、私ではないというのに。何が似ているのか。絵のなかの私は死者。形だけがあり、存在しているとはみなされない。水面を漂い、何処かへと辿り着く。もしくは、そこに留まり続ける。その私のことを誰も見ない。見えないから。だから、見えないものと共にいよう。幻で世界が覆われたとき、私は存在できるのだろうか。幻のなかで問う。すでに世界は幻で覆われているにも関わらず、私は私を繰り返し描き続ける。

Peter Doig (Rizzoli Classics)

Peter Doig (Rizzoli Classics)